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【映画】ツルハシ1本で戦う兵士の正体は?フィンランド映画『SISU/シス 不死身の男』(10/27公開)



老兵アアタミ・コルピを演じたヨルマ・トンミラ


10月は、北欧映画の公開ラッシュ!?フィンランド映画の『アアルト』(10/13公開)、ノルウェー映画の『シック・オブ・マイセルフ』(10/13公開)と、もう1本、フィンランド映画『SISU/シス 不死身の男』が日本で封切りとなります。

「SISU」という言葉を聞いて「フィンランド」と繋がる方は、フィンランド通ですね?

『SISU/シス 不死身の男』のタイトル通り、ほっこり穏やかな内容には見えません(笑)本作は、絶対に死なない、伝説の老兵が主人公。ムキムキな兵士ではなく、悪者を次々になぎ倒していくのが、レジェンド兵士という設定も非常にクールで面白い作品に仕上がっています。



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時代は、1944年の第二次世界大戦末期。ソ連に侵攻され、ナチス・ドイツに国土を焼き尽くされたフィンランドが舞台。凍てつく荒野を旅する老兵のアアタミ・コルピは、愛犬ウッコを連れ、掘り当てた金塊を運ぶ途中でブルーノ・ヘルドルフ中尉率いるナチスの戦車隊に遭遇。金塊も命も狙われることになります。

アアタミが所持しているアイテムは、金塊を掘り起こすのに必要な「ツルハシ1本」。丸腰のまま、経験と知恵を頼りに敵と対峙し、敵が置いていった武器や兵器を巧みに利用しながら、相手が戦車でも、地雷原に踏み入れても、捕まっても、ツルハシ1本で生き延びるアアタミ。アクションの名作『ランボー』や『ダイ・ハード』からの影響も見受けられるのですが、日本の映画、アニメや漫画からの影響もありそうなシーンやセリフも!?



SISU(諦めない不屈の魂)がある限り、
大勢の敵に追い込まれても生き続ける。


1917年にロシア帝国から独立したフィンランドは、これまでに4つの戦争を経験してきました。1つ目は、独立直後から起こった内戦、2つ目は、1939年に始まった“冬戦争”と呼ばれるソビエト連邦との戦い。3つ目は、第二次世界大戦に伴うソビエト連邦との継続戦争、4つ目は、ナチス・ドイツと争ったラップランド戦争です。

本作は、内戦を除く3つの戦争が舞台。1939年から始まったソビエト連邦との戦争は、結果的に継続戦争として1944年まで続き、休戦協定と引き換えにフィンランドは自国からドイツ軍の追放を求められ、ドイツとのラップランド戦争が勃発。ドイツ軍は焦土作戦を展開し、撤退しながらフィンランドの街、橋、村、財産を焼き払い、荒廃させました。

ソビエト連邦の侵攻を受け、ナチス・ドイツに祖国を焼かれても、決して諦めることなく最後まで戦い、独立を守り抜いたフィンランドの人々。どんな苦境に立たされても、決して屈することはない。忍耐強く逆風に耐え、相手に立ち向かう。そんな、「何があっても絶対に折れることのないフィンランド人の不屈の魂」は、他の言語に翻訳できない言葉「SISU(シス)」として知られています。

本作の主人公、レジェンド兵士のアアタミは、「SISU」を体現する無敵のヒーローとして登場。敵に囲まれても的確に冷静に相手を仕留める驚異的な戦闘能力を誇ります。そんなスーパー戦士とともに見逃せない登場人物が、捕虜として捕まっていたフィンランド女性たち。彼女たちのフィンランド魂にも注目です。



普段、口数が多くなく、静かでシャイといわれるフィンランドの人々の根底にある「SISU」を見せつけてくれる『SISU/シス 不死身の男』を手掛けたのは、フィンランド出身のヤルマリ・ヘランダー監督。CM監督として、ノキアやフィランド国防軍など多くの作品を担当してきました。

子どもの頃の夢に戻って、80年代を彷彿とさせるようなアクション映画をフィンランドで作りたかったようで、物語の背景にあるのは、やはり『ランボー』からアイデアが浮かんだといいます。豪胆無比な男が、過酷な大自然の中で、圧倒的な力を持つ敵に立ち向かうというもの。

また、本作で伝説の兵士を演じたヨルマ・トンミラは、脚本を読むと撮影に向けてトレーニングを開始したそう。同時に、金鉱掘りについても学んだようで、彼らがどんな生活だったのか、四方八方から攻撃されるような状況でどんな行動をしたか。また、ラップランド地方(フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、ロシアに広がる広大な北極圏のエリア)の歴史や人々の気質も学び、その風景と文化に溶け込もうと努力したといいます。

こういった話から、トンミラの役者としてのSISUを感じますが、撮影もかなり大変だったよう。ロケ地はラップランドの他にはないと始めたロケだったそうですが、凍えるような寒さと絶えず吹き付ける強風で大苦戦。それでも監督はじめ、撮影隊は諦めることなく、美しい大自然を舞台に素晴らしい作品が完成。制作の時点から、フィンランド人のSISU魂を感じるエピソードです。



これまでに筆者も、フィンランドの方々と色々な取材を通じて「SISU」という言葉を学んできたつもりでしたが、やはりこうやって映像になると、よりどんなものか、よりその精神を具体的に、身近に感じることができた気がします(いや、そんなに甘いものではなく、簡単に理解できるものではないのかも!)。

『SISU/シス 不死身の男』は、2023年10月27日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか、全国公開です。ぜひお見逃しなく!



SISU/シス 不死身の男
監督/脚本:ヤルマリ・ヘランダー
出演:ヨルマ・トンミラ、アクセル・ヘニー、ジャック・ドゥーラン、ミモサ・ヴィッラモ、オンニ・トンミラ
2022年/フィンランド/カラー/シネスコ/5.1ch/フィンランド語、英語/字幕翻訳:佐藤恵子/原題:SISU/91分/R15+
配給:ハピネットファントム・スタジオ
https://happinet-phantom.com/sisu/

© 2022 FREEZING POINT OY AND IMMORTAL SISU UK LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

2023年10月27日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開



(2023年09月19日更新)
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