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【展覧会レポート】セシリエ・マンツの日本初の個展「TRANSPOSE 発想のめぐり」(6/30迄)




6月30日まで、デンマークを代表するデザイナー、セシリエ・マンツの日本初となる個展「TRANSPOSE 発想のめぐり」が、高田馬場のアートスペース「BaBaBa」(5/20-6/30)と、東日本橋の「maruni tokyo」(5/25-6/30)の2会場で開催中!

バング&オルフセン、フリッツハンセン、フレデリシアなど、北欧のトップブランドと協働し、活動を続けるセシリエさんのデザインは、きっと皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

日本とも昔から縁があり、有田焼のプロジェクト「1616 Arita Japan」や、G7広島サミットで各国首脳陣が使った椅子と円卓が話題となった広島の家具メーカー「マルニ木工」からも作品を発表しています。さらに今年4月には、エルメスの家具コレクションも手がけるなど、多方面で活躍されています。

先月、高田馬場のアートスペース「BaBaBa」にてスタートした個展のプレスプレビューにおじゃましてきました。外は少し雨が降り、近くの大きな公園の緑の香りを感じる閑静な雰囲気とよく合う展示でした。

「TRANSPOSE 発想のめぐり」では、セシリエさんがどのように思考を巡らせ、創作のアイデアに繋げているのか。セシリエさんの頭の中をちょっとだけ覗かせてもらったような、貴重な体験でした。



完成された作品が並ぶ展覧会はあっても、「トップデザイナーさんのものづくりの思考の過程を見せる展示」というのは、なかなかレアなのではないでしょうか。ぼんやりとした形のないものを、具現化し、セシリエさん自らのキュレーションで披露。普段、どこかの企業やブランドのデザインを手掛けているセシリエさんですが、縁のある日本で初めて個展をすることになり、とても楽しそうに一つひとつ解説してくれました。

Bababaの展示は、物語が紡がれるように、4つのテーマで構成されています。セシリエさんの幼少期の思い出の場所での品々、創作の現場・仕事場、実験的プロジェクトから生まれる新しいアイデアたち、食事の風景が展示されており、最後の1つ、5つ目のテーマは、maruni tokyoでの「TRANSPOSE 発想のめぐり -A Hint of Colour」(6/30迄)で披露されています。2つの会場でセシリエさんの個展が完成されます。maruni tokyoでは、新作の発表も。

6月末まで開催されていますので、高田馬場の「BaBaBa」と東日本橋の「maruni tokyo」の2会場でぜひ、デザイナー、セシリエ・マンツを身近に感じてみてください。

■有田の記憶
3歳の時に陶芸家の両親に連れられて佐賀・有田町を訪れて以来、日本との不思議な縁がセシリエさんの創作活動のインスピレーションになっているそうです。有田町の河原で見つけた窯跡のレンガや、有田の森で見つけた陶片、両親(ボディル・マンツ/リチャード・マンツ)の作品も並んでいます。



■創作の現場

コペンハーゲンの市街地に構えるセシリエさんのアトリエの一部が再現されています。さまざまな素材を集めておいたり、時には道具まで自作したり。紙や木片、ピンやテープといった、身近なものでアイデアを少しずつ形にしていきます。「(紙やペンを走らせるのは)古いやり方かもしれないけれど」と、クスっと笑っていたセシリエさんですが、そこからグッと洗練されたデザインが生まれていきます。また、仕事場にはコーヒーやお茶を用意。ティータイムはやはり大切な時間だそう。



■新しいアイデア
スタジオで行う自由気ままな実験的プロジェクトは、デザイン活動の大切なエネルギーの源だとセシリエさん。この日本での展覧会のために、プロトタイプの「桶トレイ」なども初披露。日本の桶からインスピレーションを得て、デンマークの優秀な家具技術職人に作ってもらったもの。また、いろいろと箱に収納する日本の印象から制作したスタッキング可能な木箱や道具箱なども披露。



■食事の風景

たくさんの器が並んでいますが、「本来、ある目的のために作られた器や道具かもしれないけど、自由に好きなようにそれらを使ってみます」とセシリエさん。何が正解かというのは重要ではなく、美しく見えて、おいしく料理が食べられるという役割が果たされていることが大切とのこと。よく見ると、手前は我々でいう洋風の器でコーディネートされており、向かい側は和風の小皿やお猪口のような器での設えになっているのですが、とても賑やかで楽しげに見えます。(いろいろミックスして並べたりすると楽しいですよね)



2つ目のテーマ「創作の現場」でも、セシリエさんは、日本のおひつの蓋をサービングトレイ代わりに使っていました。とらわれず、日常でもこういった自由な発想で身の回りのものを使ってみると、いろんな楽しい発見に出くわすかもしれません。

また展示を上品に引き立てていたのが、ライトグレーのKvadratのテキスタイル。ロングテーブルに敷いた会場デザインもセシリエさん本人のアイデアだそう。



そのほかにも、入口付近にはニカリのパーティション、屋外にもマルニ木工やムート、フレデリシアなどのチェアがさりげなく置かれているので、セシリエさんが手掛ける完成形、お仕事も見ることができます。

ちなみに、会場のBababaさんは、2021年にオープンしたギャラリー。海外アーティストの展示は今回が初だそう。今後も北欧アーティスト、デザイナー関連イベントに期待です。



CECILIE MANZ EXHIBITION

5/20-6/30:「TRANSPOSE 発想のめぐり」会場:BaBaBa(高田馬場)
https://bababa.jp/ceciliemanz/ceciliemanz/
5/25-6/30:「TRANSPOSE 発想のめぐり -A Hint of Colour」会場:maruni tokyo(東日本橋)https://www.maruni.com/jp/topics/post-40407.html
※「MARUNI COLLECTION 2023 東京展」同時開催 5月25日(木) ~ 6月30日(金)



Cecilie Manz(セシリエ・マンツ)

1972年デンマーク生まれ。コペンハーゲン在住。ヘルシンキ芸術デザイン大学交換留学を経て、1997年デンマーク王立芸術アカデミー卒業。1998年コペンハーゲンに自身のスタジオを設立。家具や食器から照明、電化製品など幅広い領域のデザインを手掛ける。またそれらの工業製品に加え、実験的なプロトタイプやより彫刻的な一点もののデザインも彼女の製作活動の中で重要な位置を占める。
https://ceciliemanz.com



(2023年06月16日更新)
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