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【書籍紹介】だれも知らないムーミン谷 孤児たちの避難所(朝日出版社)


今年はトーベ・ヤンソン生誕100周年ということで、トーベ・ヤンソン、特に代表作の「ムーミン」にまつわるアイテムをたくさん見る機会が増えました。

(6月に東京ビッグサイトで開催されていたインテリア ライフスタイルのNordic Lifestyleゾーンでも、ひときわ大きなムーミンコーナーが目を引きました!)

書籍も数多く出版されており、もう一回読み直してみよう、この機会に読んでみようという人も多いのではないでしょうか。

ムーミン童話が書店をにぎわす中、異彩を放った一冊のムーミン関連書籍が登場。
今年5月に発売された、『だれも知らないムーミン谷 孤児たちの避難所(シェルター)』(朝日出版社)です。

 

これまでちょっぴりアンタッチャブルだった、「ムーミン谷」や「ムーミン」の謎や秘密が明かされるという、あまり類を見ない新しいムーミン読解本。

個人的にまず、“孤児たちの避難所”というサブタイトルにも軽く衝撃を受けました。

ムーミン以外の谷の多くの住民は、谷の外から移り住んできた「孤児」や「移民」だという見解。

私自身、“ムーミンを語りつくせるほどムーミンに詳しい!”というわけではないですが、自分の中にはなかった解釈に出くわすので、「へ~!えー!」と思わず声が(笑)

「テレビアニメ」と「原作」は、漠然と“異なるもの”として捉えていましたが、それらの内容を比較分析し、ムーミンたちがどんな生き物でムーミン谷はどんな場所なのかなど、感覚的に表現されていた部分を真っ向から探っています。

著者の熊沢里美さんは幼い頃、ムーミンをまずアニメで見て、大人になってから原作をすべて読んだそうです。原作を通じて、ムーミン谷という世界に、より心を強く惹かれていったとか。

ムーミンの世界は、読んだ人それぞれで受け取ってほしいというトーベ・ヤンソンの意向があります。しかし、著者はそれでは「あまりに勿体ない」と感じ、独自目線でこの読み解き本を完成させました。

さまざまな角度からムーミンの世界を知りたいという熱意と探究心が伝わってくる本書は、ムーミン読解に新しい風を感じる一冊となっています。

【著者プロフィール】
熊沢里美 (くまざわ・さとみ)
1987 年生まれ、福岡県北九州市出身。文筆家。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。在学中、北欧諸国の文化に興味を持ち、アイスランドを一人旅する。その後フィンランドやデンマークにも足を運び、北欧の精霊信仰や神話、民話、デザインについて学ぶ。小説やエッセイ、批評などを中心に執筆活動中。



(2015年08月05日更新)
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