2017/02/23

【特集】フィンランド・オーランド島「メルセデスショコラトリー」のショコラティエ、メルセデス・ウィンクイスト インタビュー

フィンランドのチョコレート、食べたことありますか?
お土産でもらったり、旅先で購入したり。人気のブランドが
いくつか挙がるかもしれません。そんなフィンランドで
今話題の美味しいチョコレートが、オーランド島にあるんです。



フィンランドのオーランド島をご存知ですか?ここに住む人々はスウェーデン語を話しますが、フィンランド自治領ということで、フィンランドに属します。話題のチョコレートが生み出されるチョコレート工場は、2005年に誕生。ほぼオーランド島でしか手に入らない貴重なチョコレート。そのチョコレートのために、船で渡ってまで行きたくなる。それが「メルセデスショコラトリー」です。

メルセデスショコラトリーの工場とショップは、オーランド島の港町エッケローにあるフィンランド最古の郵便局だったという歴史的建造物の中にあります。郵便局は1828年にオーランド島を占領していたロシア軍によって建てられたものだとか。


メルセデスショコラトリー本店は、かつて郵便局だったという建物の中に。

今回、世界中から最先端のチョコレートが集まる、チョコ好きにはたまらない「サロン・デュ・ショコラ」に出展。謎に包まれたフィンランド・オーランド島からやってきた注目のチョコレートを手がけるショコラティエ、メルセデス・ウィンクイストさんが初来日。ベネズエラからオーランドへ来たときのこと、ショコラティエになろうと思ったきっかけなどを聞きました。

また、かつて名窯アラビアの器を手がけた夫ペーテル・ウィンクイストさんにも、日本人にとってまだなじみの薄いオーランド島についてたずねてみました。ペーテルさんは90年代に一度日本へ。今回久しぶりの2度目の来日だったようです。



ショコラティエになったきっかけは、愛する夫からもらった一冊の本

――まず、メルセデスさんご自身のことについてお聞きします。ベネズエラの首都カラカスのフィンランド大使館員だったメルセデスさんが、ショコラティエになったきっかけを教えてください。

メルセデス:ショコラティエになったのはオーランドに来てからです。ベネズエラにいた頃は、今とまったく異なる世界、大使館や航空会社といったオフィス勤務の仕事をしていました。オーランドに来てからは、スウェーデン語が話せないので、夫ペーテルのフィンランド最古の郵便局の建物のアトリエにあるカフェでお手伝いをしていました。地元の公民館でパン作りや工芸品、お菓子作りを習ったりして。スウェーデン語が話せないので、とにかく手に職をつけなくてはと思っていました。

そんなとき、ペーテルから一冊の本をもらったんです。ベネズエラのカカオのことが書いてあった本でした。それを見て、そうだ、自分の故郷ベネズエラは世界でも高品質なカカオの国!しかも、オーランド島には、良質なバターやクリームがある。これは公民館で今まで習ったパンやお菓子作りを、チョコレート作りに生かせるかもしれないと。ペーテルからもらった一冊の本がきっかけでショコラティエになろうと決心しました。

――ベネズエラとは文化も気候もまったく異なるオーランド島で、一からチョコレート作りを始めるにあたり、一番苦労したことは?

メルセデス:ベネズエラのような湿度もなく、乾燥しているオーランド島は、チョコレート作りにはとっても適していたんです。すごく環境が整っていると思いました。ベネズエラにいた頃、料理はあまりしなかったけれど、ケーキ作りはずっとやっていました。母がケーキ職人だったんです。なので、小さい頃から何かを“作る”ということや、多少、舌は肥えていたかもしれません。

最初の3年間は、素材探しでした。クリームなど、素材を見つけるのが非常に困難でしたね。それから、スウェーデン菓子界の巨匠、Jan Hedh氏に師事してからがまた大変でした。チョコレート作りの難しさ、相性の良い調合の仕方、バランスをとるのがとても難しかったです。その人にしか出せない特徴のある味、私にしか出せない味を生み出すこと、これもまた挑戦でした。そして出会ったのが、オーランド名産のベリー「シーバックソーン(※)」でした。(※シーバックソーン:フィンランド南西部にしか生息しないベリー。多く収穫できるオーランド島では、シーバックソーンのみで生計を立てている農家も)

シーバックソーンは酸味の強いベリー。チョコレートに調合するのが難しく、シーバックソーンを酸化させて調合するときに、カカオの選び方、バランスの取り方、調合の仕方など、Jan Hedh氏から学べば学ぶほど複雑で大変でした。

シーバックソーン

水も空気もベリーも美味しいオーランド島。日本を意識した新しいチョコレートも?

――日本ではまだよく知られていないオーランド島について教えてください。オーランドの公用語はスウェーデン語ですが、フィンランド自治領ですよね。フィンランドのヘルシンキとはかなり雰囲気が異なりますか?(ペーテルさんも一緒に)オーランド島の魅力を教えてください。

メルセデス:オーランド島はまず赤、赤茶色の溶岩石が特徴的です。青い空と赤い道路。このコントラストはとても美しいですよ。水はストックホルムやヘルシンキよりも美味しくてきれいだと言われています。空気もまた美味しくて、ストックホルムに住んでいる人が「すぐにオーランド島に帰りたい」ともらすほどです。

バターやクリームも素晴らしいですが、蜂蜜も有名です。北欧のきれいなところにしか生息しない蜂が集めた蜂蜜。この蜂蜜もメルセデスショコラトリーのチョコレートで使用しています。ここは私にとって、とても特別な場所です。

ペーテル:私たちの住んでいるエッケローは、とても人気のエリアで、毎年多くの観光客でにぎわいます。昔懐かしい原風景を懐かしんで、わざわざ北欧から北欧へやってくるスウェーデン人やフィンランド人が多いですね。オーランド島の人口は3万人弱なのに、我々の人口をはるかに超える人がやってきます。ストックホルムやウプサラのフェリーが1日に10隻も到着するんですよ。



――人気の観光スポットなんですね!

ペーテル:実は最も大きな魅力はフェリー内での免税店のようです(笑)ご存知のように、北欧は税金が高い。フェリー内だとお酒やタバコ、チョコレートなどがTaxフリーで購入できるからね。ストックホルムやウプサラからフェリーが出ているんだけど、往復で(日本円で)800円くらい。Taxフリーであれこれショッピングできるフェリーに乗るためにオーランド島に来る人がほとんどかもしれない。問題なのは、みんな船の中の買い物に夢中になってしまって、島にあがってお金を落としてくれないこと(笑)そうそう、フェリーの中のレストランでメルセデスのチョコレートが提供されているよ。残念ながらTaxフリーじゃないけどね(笑)

――なるほど、やはり今のところメルセデスさんのチョコレートは、フェリー内か、オーランド島に上陸しないと食べられないというわけですね。サロン・デュ・ショコラでも大変な人気ぶりだったとお聞きしましたが、メルセデスさんが今後チャレンジしてみたいことは何ですか?

メルセデス:日本の食材とオーランド島の食材を使って、新しいチョコレート作りに挑戦していきたいです。まず今、日本を意識して作ってみたのが、「抹茶×シーバックソーン」。シーバックソーンは私のチョコレートになくてはならないもの。実はすでに「抹茶×シーバックソーン」の試作は出来上がっています。いいのが出来ましたよ!(通訳さんによると、ただの抹茶チョコよりも、シーバックソーン入りのほうが抹茶が引き立って美味しいと、その意外性に驚いていました!)

どのくらいの配合がいいのか、試行錯誤しながら。そういった工程もまたエキサイティング。常に研究し続けています。現在、メルセデスショコラトリーのチョコレートを購入できる実店舗はオーランド島の本店のみだけど、オンラインでは、フィンランドとスウェーデンで展開しています。今後ももっと広げていきたいと思っています。ぜひ、美しいオーランド島にも遊びに来てくださいね。

メルセデスショコラトリー
Mercedes Chocolaterie – Utsökta handgjorda chokladprodukter av finaste åländska råvaror



ホテルから毎日見える富士山の美しさに感動していたメルセデスさん。真っ白で美しい富士山に出会えるのは、冬のシーズンがベストだと話すと、嬉しそうに目を輝かせていました。インタビューの翌日、京都・奈良に行くと嬉しそうに話してくれたお二人。滞在中は寒波に見舞われ、雪になったかもしれませんが、旅はいかがだったでしょうか。

陶芸家のペーテルさんは、陶芸で有名な茨城県笠間市に行きたかったようですが、今回は時間なく断念。日本の器にも興味津々。ぜひまたゆっくりと日本で、陶芸の地めぐりが楽しめるといいですね。

▼北欧区ブログでは、こちらで書ききれなかったペーテルさんのお話を掲載。こちらもあわせてご覧ください!
【特集】フィンランド・オーランド島産のチョコレートの美味しさの秘密とは?仲良し夫妻の素顔に迫る!

▼関連記事
フィンランド生まれの6つのチョコレートメーカーが登場「ショコラフィンランド」

取材協力:ラクシアトレード、フィンランド大使館商務部
このページの先頭へ