2015/12/10

【特集】編み物でノルウェーカルチャーを伝える!ニット・デュオ、アルネ&カルロス

アルネ&カルロス、5度目の来日!
編み物や庭仕事、ノルウェーでの暮らしはまるでおとぎ話?!
人々を魅了するニットデザインはどこから生まれるの?



世界各国の編み物ファンに大人気!ノルウェーのニット・デュオ、アルネ&カルロスが来日。11月27日に人気アイテムのひとつ、クリスマスボールのパターンを紹介した編み物レシピ本『アルネ&カルロスのクリスマスボール』の翻訳本が出版され、各地で開催されるワークショップやイベントで来日した二人がノルウェー王国大使館に登場。ニットデザインで人気の彼らですが、ノルウェーでのライフスタイルにも注目が集まっています。さらに、毛糸で編まれたクリスマスボールにはひとつ一つ、物語がありました。


住まいはオスロから約200km北の山の上!
使われなくなった古い駅が自宅兼アトリエ


1999年より現在の家に住んでいるというアルネ&カルロス。当時アルネが見つけてきて、カルロスがショックを受けたという家は、オスロから約200km北に位置するヴァルドレスのエトネダールにある古い廃駅でした。「すごく大きな“プール”があるんだよね」と自慢の家をアピール。すぐさま、「すごく冷たくて、8ヶ月間は凍っているけどね」と笑わせます。そんなプールという名の巨大な湖で泳いでいるという二人は、「ここからいろんな可能性が広がった」といいます。

引っ越したばかりのときは、もともと鉄道だったということで、あたり一面たくさんの石が敷き詰められていました。そこで、実用的かつ美しい庭が必要だと、少しずつ土を入れて二人で手を加えていき、灰色で殺風景だった場所が今では世界中のファンを虜にする有名な庭へと変貌を遂げました。

「イングリッシュガーデンをイメージしたけれど、ノルウェー風でもある」という自慢の庭。1つだけ巨大な岩を運んでもらった以外には、すべて二人が作り上げたといいます。庭いじりをしながらニットのパターンを考えることもあるそうで、「ノルウェーの夏は一晩中明るいから24時間働けるしね」と、庭仕事は二人のニットデザインに重要な役目を果たしているようです。

作品のインスピレーションは子供時代から
古い絵本の挿絵にある模様を虫メガネで?

庭まで作ってしまう二人はやはり手を動かすことが大好き。編み物の技術はもちろんのこと、彼らの作品が人々を魅了するのは豊富なパターンデザインの数々。「伝統的なものからエキスを取り出して新しいものを生み出すんだ」という二人の作品アイデアは、子供時代にあったものが大きく影響しています。

ノルウェーの最も歴史のある編み模様「セーテスダール(SETESDAL)」など、古い写真や昔のクリスマスカードなどからインスピレーションを得たりするそうです。また、「古い絵本の挿絵にある小さな模様を虫メガネで見て、そのパターンを取り出して、自分たちで組みなおしたりね」と、古い伝統を引き継ぎながら、自分たちの解釈で新しいデザインを生み出していくのです。



パターンづくりをしている中で、ドイツのメーカーと一緒に毛糸を作ることになったアルネ&カルロス。“魔法の毛糸”と呼ばれるようで、編むだけで美しい模様が浮かびあがるというもの。ちなみに、ノルウェーを代表する画家、エドヴァルド・ムンクの絵からインスピレーションを受けた毛糸(上画像)は、ムンクの代表作「叫び」で使われている配色を意識したものだといいます。

編み出したら、やめられない、とまらない?!
「編み物は趣味の中でも中毒性のあるもの」


2008年、日本のデザイナーズブランド「コム・デ・ギャルソン」から、セーターやマフラー、帽子、ネックウォーマーといったクリスマス・コレクションのデザインの依頼を受けたアルネ&カルロス。そのとき、クリスマスボールでお店を飾ってみるのはどうかという提案が通り、店内がクリスマスボールでデコレーションされ、同時にクリスマスボールも商品として販売されることになりました。それをきっかけに、「クリスマスボールの本を作ろう!」とひらめいたそうです。

2010年に作ったクリスマスボールの本は、一般書を抜いてノルウェーで何十週にもわたってベストセラーとなり、翌年には世界各国の言語に翻訳され、この秋ついに、待望の日本語翻訳本が出版されました。『1つの編み方と55のパターン アルネ&カルロスのクリスマスボール』で紹介されているのは、5本の棒針を使った球体の編み方を覚えさえすれば、いろんなパターンのクリスマスボールが編めるというもの。

パターンにはそれぞれテーマがあり、編み物本なのに、まるでおとぎ話を読んでいるかのようにワクワクする二人のお話がいっぱい。古いものが好きだという二人は、ノルウェーに古くから伝わる伝統や文化を探り、そのパターンの持つ意味や由来をわかりやすく解説してくれています。

たとえば、「スキーセーター」、「子どもの手ぶくろ」、「クリスマスのお菓子」、「ろうそく」など、二人の好きなものや日々の暮らしからアイデアをもらったパターンデザインが紹介されています。



クリスマスはやはり二人にとっても特別なもので、アルネがおばあちゃんから聞いたエピソードを披露してくれました。おばあちゃんが小さい頃は必ずといっていいほど一家に一匹のブタがいたそうです。そのブタは大きくなってくると外の小屋へ移され、クリスマスにはテーブルの上に料理として出てきたという・・・。クリスマスにはブタを食べる習慣があるのですが、「ぼくのおばあちゃんは幼い頃、なかなかハードな体験をしていると思う」とアルネ。

また、クリスマスの後に行われる恒例行事でのエピソードも。ヤギに変装して近所を練り歩き、お菓子をもらうというハロウィンの北欧版のような行事でのこと。変装はあくまでも“ヤギっぽく”がポイントなのですが、アルネ少年はお母さんからストッキングを貸してもらい、それを頭から被って近所を訪れたとか。歌も歌わず、挨拶もせず、「ただただ寒かった」という苦い思い出を吐露。アルネ少年のシュールな画が浮かびます(笑)。


クリスマスボールに乗るネズミの「マグヌス」。この組み合わせは、あるアーティストのミュージックビデオを見ていて、ひらめいたとか。

アルネ&カルロスの作品はクリスマスボールだけではありません。個性豊かな編み人形も紹介しています。編み人形は「クリスマスボールに体がついているもの。クリスマスボールを3つ作ればいい」とサラリと解説。いつも遊び心を忘れずに楽しんで編むのだそう。ある有名アーティストの編み人形をSNSにアップしたところ、ものすごく反響があったとか。また、ノルウェーの公的な機関からロイヤルファミリーの編み人形制作を依頼された二人。「ぼくたちの編みものが芸術になった瞬間だった」と興奮気味に話してくれました。

クリスマスボールを作りはじめて5年。二人のあふれんばかりのアイデアは、ただパターンを生み出すだけでなく、進化させています。小さなクリスマスボールが入ったアドベントカレンダーなんかは、「日本の小さなツリーにぴったりじゃない?」と笑顔。ちなみに、クリスマスボールがちょっと大きいと感じる人は、「細い糸で編めば小さめなボールになるよ」とのこと。

2015年12月は、福岡・鹿児島・大阪・名古屋・東京と各地を訪れるアルネ&カルロス。言葉はわからなくても、編み物を通じて、笑顔を分かちあえる。そこからまた、新たなパターンのヒントにつながるかもしれません。日本の何かからインスパイアされたパターンが登場する日はあるのでしょうか。今後のアルネ&カルロスの展開が楽しみです。


2015年11月27日発売
『1つの編み方と55のパターン アルネ&カルロスのクリスマスボール』(日本ヴォーグ社)
1,500円(税別)

アルネ&カルロス公式HP
http://www.arne-carlos.co.jp/(日本語)
http://www.arnecarlos.com/(英語)

2015年Japan Tourのスケジュールはこちら↓
http://www.arne-carlos.co.jp/2015japantour.html

【参考記事】
2014年4月の東京ホビーショーのトークゲストで登場したアルネ&カルロスの模様をご覧になりたい方はこちらもチェック!
ノルウェーの人気ニットデザインデュオArne&Carlosトークショー@ 日本ホビーショー

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