HOME > What’s New > 2022年 > 2022年06月07日

【映画】現実は理不尽で矛盾だらけ。ほろ苦くて愛おしい人生に共感!映画『わたしは最悪。』(7/1公開)




本日紹介する映画は、昨年2021年の第74回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞したノルウェー他合作映画『わたしは最悪。』。

カンヌといえば、先日、第75回カンヌ国際映画祭が閉幕したばかりで、リューベン・オストルンド(Ruben ÖSTLUND)監督最新作『TRIANGLE OF SADNESS』(スウェーデン、英国、米国、フランス、ギリシャ合作)が最高賞となるパルムドールを受賞。また、Tarik SALEH監督の『BOY FROM HEAVEN』(スウェーデン)が脚本賞、アリ・アッバシ(Ali ABBASI)監督の最新作『HOLY SPIDER』(フランス、ドイツ、スウェーデン、デンマーク合作)が女優賞に輝くなど、北欧や北欧にゆかりのある監督作品が軒並み受賞を果たし、話題となりました。

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『わたしは最悪。』は、『母の残像』(17)や『テルマ』(15)を手掛けたノルウェーのヨアキム・トリアー監督による作品。第94回アカデミー賞にて、脚本賞と日本の濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が受賞した国際長編映画賞の2部門でノミネートされた注目作がこの夏、日本にやってきます。

▼『テルマ』(2018年10月20日公開)
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理想と現実の間に揺れながらも、失敗を繰り返しながらも、
自分の気持ちに正直に人生を選択していく1人の女性の物語。


『わたしは最悪。』は、ある1人の女性、ユリヤの日常を描いた映画。学生時代は成績優秀にも関わらず、「これしかない!」という決定的な道が見つからないユリヤ。グラフィックノベル作家として成功した年上の恋人アクセルは、「子どもがほしい」「良い母親になるよ」と、さりげなく妻や母親といたポジションを勧めてきます。

ある夜、招待されてもいないパーティーに勝手に紛れ込んだユリヤは、若くて魅力的なアイヴィンに出会います。新たな恋の勢いに乗って、ユリヤは今度こそ自分の人生の主役の座を掴むことができるのか。



恋愛、キャリア、家族、結婚など、ユリヤの人生のターニングポイントを追いかけ、小説のような章仕立てでリズミカルに展開されるのが特徴的。ヨアキム・トリアー監督は、脚本の執筆を始めた早い段階から、このアイディアを思いついたとか。ユリヤの20代半ばから30代初めにかけての数年間を、本のような構成にすることで、彼女の生き方を網羅できると考えたそうです。また、小説風の形式は、ユリヤが小説のようなドラマティックな運命を望んでいることも伝わってきます。

ユリアの日常・人生を通じて、理想のようにはいかない、ほろ苦い現実がリアルに描かれた内容に、思わず大きく頷いてしまう人が続出。願っていたことは叶わず、望んでいなかったことが起こってしまう。すれ違いやタイミングもあったり、言ってることとやってることが違っていたり。そんな理不尽で矛盾だらけの人間模様に、見ている人も過去を振り返り、共感したくなくても共感に追い込まれてしまいそう(笑)

思い描いていた人生とは違うかもしれないけれど、“夢と現実に折り合いをつける”というトリアー監督のアプローチがとても人間味があって面白い。人生に正解などなく、「これで良かったのかな」と、それぞれの今を肯定してくれるような愛を感じるストーリーです。



圧倒的な存在感で観る人を魅了する主人公ユリヤを演じるのは、33歳にして映画初主演を果たし、「かつてないスターの到来」と絶賛。第74回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞したレナーテ・レインスヴェ。トリアー監督が本作を作った動機の一つは彼女だったと打ち明けているほど。

トリアー監督の10年前の作品『オスロ、8月31日』で端役を演じたレナーテ・レインスヴェ。さまざまな作品に出演経験があるものの、主役に抜擢された作品はゼロ。明るさと深みのバランスが独特で、コメディもシリアスなドラマも演じられる素晴らしい才能を持っていると、トリアー監督はレナーテを主役のユリヤ役に抜擢。ユリヤのキャラクター造形、複雑な心情を作っていく上で、レナーテに助けられたことがたくさんあったと話しています。

年上の恋人のアクセル役は、『パーソナル・ショッパー』『ベルイマン島にて』のアンデルシュ・ダニエルセン・リー。彼は、今年4月22日より日本で劇場公開された『ベルイマン島にて』でも重要なキーマンを演じています。

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舞台のノルウェーの首都、オスロの美しい景色も見どころ!『わたしは最悪。』は、7月1日(金)より、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ他全国順次公開!



わたしは最悪。
監督:ヨアキム・トリアー 『テルマ』(17)、『母の残像』(15)
脚本:ヨアキム・トリアー、エスキル・フォクト
出演:レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハーバート・ノードラム
© 2021 OSLO PICTURES - MK PRODUCTIONS - FILM I VÄST -  SNOWGLOBE -  B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA/2021 /ノルウェー、フランス、スウェーデン、デンマーク/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/128分/字幕翻訳:吉川美奈子/後援:ノルウェー大使館/R15+
https://gaga.ne.jp/worstperson/

2022年7月1日(金)より、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ他全国順次公開




(2022年06月07日更新)
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