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【書籍&グルメ】食文化を知るとエストニアが見えてくる!エストニア料理に特化したレシピ本が日本初登場



ヴァイノ・レイナルト駐日エストニア大使


日本初となるエストニアの料理のレシピ本『旅するエストニア料理レシピ-The Home Estonian Cooking Recipes-』(10月20日発売)の発売記念プレス発表会が、駐日エストニア大使館にて行われました。

IT立国であり、伝統的な雰囲気が残る街並みで知られるエストニア。フィンランドからフェリーで訪れた人もいらっしゃるのではないでしょうか。ただ、エストニアのグルメっていうと……?まだ知られざるエストニアのグルメ、そして魅力を、レシピ本の著者である佐々木敬子さんのお話を踏まえながら、お届けします。

佐々木さんは、日本で唯一のエストニア料理家。同書は、自らエストニア国内各地に足を運び、それぞれの場所で教えてもらった貴重な内容をもとに執筆されたレシピ本です。日本で調達できる材料を利用し、味を模索。研究に研究を重ねて、本場エストニアの味を再現しました。

前菜、スープ、メイン、パン、スイーツ、ドリンクと、レストランのメニューを眺めているような目次にワクワク。エストニアの食卓に欠かせないライ麦パンの作り方も伝授。また、エストニアを巡った際に、食を通じて出会った人々との温かい交流を感じる「エストニア食卓紀行」のコラムも必見です。わかりやすいエストニアの「おいしい名産地マップ」も便利!



■レシピ本を通じて、日本とエストニアの架け橋に。

駐日エストニア大使館でのプレス発表会では、まず、ヴァイノ・レイナルト(VÄINO REINART)駐日エストニア大使のウェルカムスピーチがありました。「外交の際も、相手の胃袋を掴むことで、相手の心を掴むことが出来、スムーズに行くこともあります」と大使。ちょっとしたおもてなし、おいしいもので、互いに打ち解け合うというのは、全世界共通かもしれません。

また、大使は、「現時点で、エストニア料理の店は日本にはないけれど、佐々木さんの本や活動で日本の人にエストニアの食文化を伝えることができたら」と期待を込めました。



■エストニア出身の家族にこたえるために始まったエストニア料理への挑戦。

この本が生まれたきっかけや、レシピ内容などを、著者の佐々木敬子さんとエッセイストの高木良子さんが対談形式で話してくれました。

なんでも、佐々木さんのエストニア出身の家族から、日本でエストニア料理を食べたいというリクエストがあり、食べられる店を探してみたところ、全国に一軒もエストニア料理を提供している店がなかったそうです。そこで、日本で手に入る材料だけで再現しようと、数々の失敗を繰り返し、試行錯誤しながら、満足のいくレシピを完成させました。

さらには、本場エストニア料理の味を知るために、2019年8月から2カ月、現地に滞在。エストニア国内を駆け巡った佐々木さん。はじめは、食を知るために来たエストニアでしたが、面白いことに、人へとどんどん繋がり、不思議な縁で何度も驚くような出会いがあり、いつも誰かが助けてくれたそうです。食を通じて、エストニアという国、人の魅力を知る旅になったとか。(これは北欧諸国でもありますよね!日本でも北欧繋がりで、そういったのを感じたことがあります^^)



卵バター、自家製発酵バター、ベリーはちみつをライ麦パンと。ヨーグルトとベリー入りのクイーンケーキはベリー好きなエストニアらしいケーキだそう。可愛いピンク色の「サマーコールドスープ」は、ケフィアヨーグルトとビーツ、ベーコン、じゃがいも、ピクルスで作る夏のスープ(中に入れる具は各家庭で変わるらしい)。どれもさっぱりとしていて、食べやすい!(夏の食欲のない時にもさっぱりといただけそう♪)


■まだまだ日本では知られていない、エストニアの食文化。

エストニアの主食はというと、ライ麦パン。他の北欧諸国のライ麦パンより甘みがあるのが特徴だそう(デンマークのオープンサンドに使われているものよりは、フィンランドのほうがやや甘いかも?北欧でも違いがありますね)。米もあるそうですが、お粥や寿司用。日本産の米もあるけれど値段が高いため、現地の人はスペイン産の米を調達するようです。

夏は恵みの森へ。高い山がなく、300mちょっとの丘のようなところが、バルト三国の中でも一番高い“山”だとか。街から歩いていると、自然と森に入っていってしまうような環境だそう。自然環境の享受を認める「自然享受権」は他北欧諸国と同じ。森で採れたキノコやベリーを料理で使ったり、川で捕れるヤツメウナギをそのまま丸焼きでいただくことも。

味は、超シンプル。調味料も塩とコショウのみの料理が多く、非常にシンプル。日本も食材を生かした料理や味付けが多く見られますが、「日本料理のほうが、もっと複雑な味かも」と佐々木さん。シンプルな味付けでも、佐々木さんは、現地で食べられないものはなかったといいます。マイルドでまろやか、ミルキーな味付け。

酒豪が多いこともあり(笑)、エストニアには酒類も豊富。イタリアやフランスのようなブドウのワインはないけれど、ベリーのワイン、シードル、ビール(日本にも入ってきています!)など。独特の文化を持つ、ロシアに近いエストニア南東部にあるセト地方には、ハンザというモルトから作られたアルコール度数の高い自家製酒があるそうです。



■エストニアに行ったら抑えておきたいおすすめの料理や時期は?

スウェーデン人によって作られたという西海岸にある街、ハープサルは、夏になるとヨーロッパの観光客でにぎわうリゾート地(佐々木さんの印象では、日本の“葉山”のような場所だそう)。海辺で、いろんな料理が楽しめるおしゃれな店が多く、おいしいパン屋やスイーツの店も並んでいるそうです。

また、エストニアの南東部にあり、ロシアと国境を接するセト地方には、ニンニクを使う料理があるそう。独自の文化を体験しに行くにはおすすめの場所のようです。

夏至祭のある6月末は、日が長いこともあり、他の北欧諸国同様、やはりおすすめしたい美しい時期のようです。佐々木さんが個人的に好きなのは、夏の終わりの9月の頭。暑くもなく、寒くもなく、ちょうど良い気候だそう。

12月のクリスマスシーズンも、雪があれば、とても美しくておすすめだとか。エストニアの建物の壁の色はパステルカラーが多く、これは、雪が降ったときにパステルカラーだと反射して、キレイに明るく見えるという効果があるそうです。そのため、暗い色の建物は避けられているといいます。(なるほど!アイスランドもカラフルな家が多いのは同じ理由でしょうか!)

気になるクリスマスの料理には、「スルト」といった日本の煮こごりのようなゼリー寄せの料理や、血のソーセージといった内臓を使った料理があります。夏に狩猟して、肉を食べていったら、クリスマスの頃には内臓や骨に付いた肉しか残っていないため、内臓を使った料理(血のソーセージ)や、骨付き肉を煮た煮汁(コラーゲン)で固めたスルトのような工夫を凝らした料理が生まれ、クリスマスの食卓に並ぶようになったそうです。

■困っていると助けてくれる。飾らない人柄も魅力。

「Muhu leib(ムフレイブ)」という、こだわりの自家製酵母で作られたライ麦パンで知られる有名なパン屋があります。国内で知らない人はいない店で、今では、タリンやタルトゥといった主要都市や空港などにも拡大中だそう。

その「ムフレイブ」のムフ島にある本店に行くと、創始者のマルティンさんが従業員に混ざり、店頭で自ら販売しているのだそう。経営者という立場のマルティンさんですが、フラットで飾らず、まったく気取らない人柄なのだとか。「素の感じがまさにエストニア人でした」と佐々木さん。エストニアの人は、シャイではあるけれど、困っていると必ず手を差し伸べてくれるといいます。(日本やフィンランドにも通じるものがありますね)

今後、佐々木さんは、日本国内でエストニア料理を伝えたいとの想いがあり、トークイベントやワークショップの開催を予定しているそうです。また、バルト三国の人にインタビューして聞いた話を紹介するといった、バルト三国の情報サイト「バルトの森」も開設。

実は、今年2021年は、「日本・エストニア友好100周年」の記念の年。エストニアが気になっている人は、『旅するエストニア料理レシピ-The Home Estonian Cooking Recipes-』を通じて、エストニアのグルメから、エストニアの魅力を発掘してみませんか?



【著者 佐々木敬子プロフィール】

食文化研究家。バルト三国最北の国エストニアに出会い、日本でエストニアの食文化を広める活動開始。2018年より駐日エストニア共和国大使館のレセプション、駐日欧州連合代表部などに料理の提供協力。他、企業向けレシピ開発、食文化講演などを行う。料理教室「エストニア料理屋さん」、バルト三国情報サイト「バルトの森」主宰。

●エストニア料理屋さん https://estonianavi.com/
●バルトの森 https://baltnomori.com/


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エストニアのアクセサリーなど、デザインにも注目していきたいですね!


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(2021年10月27日更新)
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