HOME > What’s New > 2020年 > 2020年06月24日

【書籍】人間って本当はこんなに多様!スウェーデンのLGBT+当事者たちのリアルなお話「ぼくが小さなプライド・パレード 北欧スウェーデンのLGBT+」




毎年6月から8月頃まで開催される北欧のプライド・パレード。LGBTをはじめとする性の多様性を広め、祝福するイベントです。今年は新型コロナウイルスの影響で、北欧諸国でもオンライン開催や延期が決定していました。

オスロでのプライド・ウィークは、6月19~28日にオンラインで開催。ヘルシンキは9月7~13日、コペンハーゲンは8月17~23日、レイキャヴィクは8月4~9日に実施。ストックホルムは7月31日~8月2日まで、オンラインで開催されるようです。(今年は夏はもちろん、秋も難しいかと思われましたが、フィンランド、デンマーク、アイスランドは開催するようですね!)

自粛期間中の4月、5月時点で、オスロのオンラインイベントやヘルシンキの延期は早々と決定していたようですが、他地域は模索中。今年はどうなるのかな……と気になっていた矢先、4月下旬発売のこちらの本が届き、読ませていただきました。

「ぼくが小さなプライド・パレード 北欧スウェーデンのLGBT+」(ソフィア・ヤンベリ著/轡田いずみ訳/ミツイパブリッシング刊)です。

LGBT+当事者でもある著者は、日本文化に惹かれ、日本での留学・勤務経験のあるスウェーデン・ストックホルム生まれのソフィア・ヤンベリさん。LGBT+に世界で最もフレンドリーな国の一つ、スウェーデンのLGBT+事情を詳しく紹介した本書は、日本が大好きだというヤンベリさんが日本の読者向けに描き下ろした一冊です。



男性と女性だけ?性の括りは2つだけ?人間って、本当は多様!
 


ここであらためて、LGBT+とは?ということに触れておきましょう。ヤンベリさんによると、

L・・・レズビアン(女性の同性愛者)
G・・・ゲイ(男性の同性愛者)
B・・・バイセクシュアル(二つ以上の性に惹かれる人。両性愛者)
T・・・トランスジェンダー(生物学的な性と、こころの性が一致しない人)

ここに加えられるのが「+(プラスマーク)」。LGBTでは表現できないアイデンティティを持つ人たちのこと。

例えば、
A(エイ)セクシュアル(他者に対して性的に惹かれない人)
ノンバイナリー(男女という二つのジェンダーどちらにもあてはまらない人)
ジェンダークィア(規範と異なるジェンダー・アイデンティティを持つ人)
インターセックス(男性や女性の典型的な定義にあてはまらない生殖・性的構造を持って生まれた人)

などなど!

LGBTにQ(クィア)を加えたLGBTQという呼び方は聞いたことがありますが、こんなにたくさんあったなんて!

これだけ人間はみんな、いろんな個性を持っているのに、確かに男性と女性だけという性の括りなのもおかしな話かもしれません。まだまだ上記のどれにもあてはまらないという人もいるかもしれません。人間って、本当に多様なんですね!



当事者たちが語る、リアルかつ貴重なお話は必見。
 


本書では、スウェーデンに住むLGBT+の人々のインタビューを通じて、LGBT+の人々の体験や暮らしといった実際の声を紹介しながら、LGBT+の歴史から最新事情までわかりやすく教えてくれます。

ヤンベリさんをはじめ、本書に登場するLGBT+の人々も口々に話していたことは、スウェーデンも完璧ではなく、まだまだ様々な課題はあるものの、スウェーデンという世界でも最もLGBT+について先進的な国であることは、彼らにとって、とても重要な要素だということ。LGBT+の人が差別されないよう政府から守られ、ありのままの自分たちでいられ、正直に生きることができるという訳です。

「知ること」はとても大切なことだそう。ヤンベリさんも自分のことを知っていたから、ありのままの自分でいることができたとか。もちろん、セクシュアル・マイノリティの人が安心して住める国にいるヤンベリさんでさえ、本当に自分を見つけるのに時間がかかったそうです。

ひと昔前、同性愛者は犯罪者、精神的な病気だと言われたり、つい最近まで、トランスジェンダーの人は強制不妊手術をさせられていたことも。そして今もなお、ゲイの男性は献血することができないのだそう。本書には、さまざまな立場の当事者たちによるリアルな物語が綴られており、最大の魅力になっています。

自分だけの小さなプライド、自分のアイデンティティだけは譲れない自信がある。そんな当事者のリアルなお話を伺える貴重な機会です。カミングアウトのタイミングは?親にはどう伝えた?結婚のこと、子育てのことなど。



LGBT+の存在が、“あたりまえ”の世の中に。



ヤンベリさんは、LGBT+の人にも、そうでない人にも、こう訴えています。

「自分は自分だとわかっていればそれで十分」
「必ずしも理解を求めているわけではなく、受け入れてほしい。自分と異なると思う人がいても、人はみんな違うということをただ受け容れればいい」
「良いことでも、悪いことでもなく、ただ違うというだけ」

本書を読んでいて、心震えたのは、ヤンベリさんの「私はいつか、このような本が必要なくなる日が来ることを願っています」という言葉。今はまだわからないことが多く、その知識を共有し、認識する段階にいるかもしれません。LGBT+の存在が、“あたりまえ”になっている世の中。LGBT+のための法律も、団体も、必要なくなる世界へ。

時間はかかるかもしれません。でも、スウェーデンを筆頭に、きっと一進一退を繰り返しながらも、少しずつ少しずつ進んできているのは間違いなさそうです。本書内のLGBT+の人たちによると、日本はスウェーデンをコピー&ペーストする必要はなく、日本は日本のやり方でいいのではとのこと。

LGBT+の人も、そうでない人も、知らなかったという人も、少しは知っているけど、よくわからないという人も。相手や自分を知るだけで、今よりももっと住みやすい場所になるに違いありません。

とてもわかりやすい文章で、筆者も知らなかったことがいっぱい。すごく見識を深めることができました。ご興味ある方はぜひ手に取ってご覧になってみてくださいね。

▼ぼくが小さなプライド・パレード 北欧スウェーデンのLGBT+
(ソフィア・ヤンベリ著/轡田いずみ訳/ミツイパブリッシング刊)
https://mitsui-publishing.com/product/pride-parade



(2020年06月24日更新)
このページの先頭へ