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【映画】アイスランドから切実なメッセージを知的にユーモアたっぷりに伝える『たちあがる女』(3/9公開)





東京国際映画祭で上映され、馬を主人公にするという演出で観客の度肝を抜いた『馬々と人間たち』のベネディクト・エルリングソン監督による長編2作目となる最新作が、ついに日本劇場公開となります!

2018年のカンヌ映画祭批評家週間の劇作家作曲家協会賞を受賞し、北欧ナンバーワンを決めるノルディック映画賞も受賞、本年度アカデミー賞®アイスランド代表作品にも選出された話題作は、コーラスの講師と環境活動家という二つの顔を持った女性が、養子を迎え入れることを決意。長年の夢だった母親になることを実現するために立ち上がるという物語です。

音楽と自然を愛する主人公ハットラには、合唱団の講師とは別に、謎の環境活動家「山女」というもう1つの顔がありました。環境破壊を繰り返す企業、地元アイスランドの自然を脅かすアルミニウム工場に対し、闘いを繰り広げていたハットラ。ある日、随分前に申し込んでいて忘れかけていた養子の申請がついに受理されたという知らせが届き、ハットラは母親になるという長年の夢を叶えるために、アルミニウム工場との決着をつけようと最終決戦に挑みます。



一見、知的で現代的な女性なのですが、アルミニウム工場への闘いには、あくまでもアナログなやり方で挑む姿が印象的。工具を使って電線を切る、近づいてくるドローンに矢を放ち、仕留める。自然を愛し、環境破壊を嘆き、そこに立ち向かう女性ハットラ。アイスランドの苔むす大地をひたすら走り、忍者のように危険を察知。軽やかに身を隠し、アイスランド全ての自然を味方につけているかのような、しなやかで強い彼女の姿を見て、何度見ても刺激を与えてくれる筆者も大好きな、宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」のナウシカが浮かびました。皮肉がたっぷりと込められているラストシーンは、あらためて大切なものに気づかされます。


筆者ツボのシーンのひとつ。ネルソン・マンデラ氏のお面?!

ちなみに、ハットラがしばしば走り疲れて、苔むす大地でうつ伏せになって幸せそうな顔を浮かべるシーンがあるのですが、アイスランドの溶岩台地の苔は厚みが数十センチもあり、まるでふわふわの布団のよう感触なのだとか。大地に抱かれ、癒される瞬間を守りたい。その一心でハットラは闘い続けているのです。

この映画を魅力的にしている演出に、劇伴奏者たちの登場があります。本来ならは、スクリーン内には映らないはずのバンドや合唱隊がさり気なく出てきては、ハットラの心の内を表現しているところが面白い。ハットラを見守り、寄り添う彼らは、まるで妖精のよう。ハットラも合唱団の講師ということで、音楽はこの映画をよりユニークに、そして盛り上げてくれる大きな役目を果たしていますので、ここも注目ポイントです。



『馬々と人間たち』にも出演したアイスランドの女優、ハルドラ・ゲイルハルズドッティルが主人公のハットラと双子の姉アウサの二役を好演。他にも『馬々と人間たち』を彷彿させるポイントがいくつかあるので、こういったところも一緒に楽しんでみてはいかがでしょう。

各映画祭を席巻している本作なのですが、なんと、ジョディ・フォスターが監督と主演で、ハリウッドリメイクされることも決定したのだそう。「ハットラを演じるのが待ちきれない」と、本作に強く引き込まれたそうです。こちらも楽しみですね。

ベネディクト・エルリングソン監督最新作、アイスランド映画『たちあがる女』は、2019年3月9日(土)、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開!

【ストーリー】
セミプロ合唱団の講師をしながら、“山女”というコードネームを持つ環境活動家として、密かにアルミニウム工場に対して、孤独な闘いを繰り広げていたハットラ。ある日、長年の願いだった養子を迎えることに。母親になるという夢の実現のため、ハットラは工場との決着をつけようとする―。



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たちあがる女

監督・脚本:ベネディクト・エルリングソン
出演:ハルドラ・ゲイルハルズドッティル、ヨハン・シグルズアルソン、ヨルンドゥル・ラグナルソン、マルガリータ・ヒルスカ、ビヨルン・トールズ、ヨン・グナール
2018年/アイスランド・フランス・ウクライナ合作/アイスランド語/101分/英題:Woman at War
配給・宣伝:トランスフォーマー
http://www.transformer.co.jp/m/tachiagaru/

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3月9日(土)、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開






(2019年02月14日更新)
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