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【展覧会レポート】人間の感情や内面を描いた作品で人々の心に訴えるノルウェーの画家ムンクの大回顧展(1/20迄)



10月27日(土)より、ノルウェーの画家、エドヴァルド・ムンク(1863-1944)の大回顧展「ムンク展―共鳴する魂の叫び」が、上野の東京都美術館にて開催中。画家の故郷ノルウェーのオスロ市立ムンク美術館のコレクションを中心に、約60点の油彩画に版画などを加えた約100点が展示されています。


エドヴァルド・ムンク《叫び》1910年?

ムンクは生涯をかけて、1つのモチーフを繰り返し描いたりしているのですが、ムンク作品の代名詞的存在である「叫び」のうち、ムンク美術館が所蔵する厚紙にテンペラ・油彩の技法で描かれた《叫び》(1910年?)が初来日。ムンク美術館でも常時展示されているわけではない作品のため、なかなかお目にかかれない貴重な《叫び》は必見です。

愛する家族の死、絶望、嫉妬、孤独といった、人間の内面を生々しく描いたムンク。彼の取り巻く状況そのものが作品に反映され、その時々の心情、精神状態までが伝わり、迫ってきます。来日した「叫び」のオーラはさすがでしたが、その「叫び」でさえ存在が薄まってしまうのではないかというほど、他の作品もまた圧倒的な存在感と輝きを放っていました。


エドヴァルド・ムンク《接吻Ⅱ》1897年、《接吻Ⅳ》1902年、《接吻》1897年

個人的に、中でも素敵だなと思ったのは、まず「接吻」。生で見る前はそこまで惹かれることがなかったのですが、いろんなバリエーションで並べられている展示を見て、周りの静けさと情熱的に溶けあう二人のコントラストにぐっときました。また、やはり素材や技法を変えながら繰り返している作品の表情を読み取るのが気に入ってしまったのか、「吸血鬼」や「マドンナ」も時間をかけてじっくりと見入ってしまいました。「マドンナ」と「吸血鬼」が裏表になっている石版の作品は、まるで被写体が浮かび上がっているような神々しさとインパクトに吸い寄せられました。

 
エドヴァルド・ムンク《石版(マドンナ、吸血鬼Ⅱ)》1895/1902年

「芸術を生み出すためには孤独でなければならない」と生涯一人であることを選んだムンクですが、40代半ばで故郷ノルウェーに戻り、晩年にかけて明るい色彩が眩しい自然や風景画などを手がけるようになります。いろんな闇が付きまとっていた彼ですが、60年もの時をかけて作品を生み出せたことに悦びを感じ、充実した人生を送ることができたのではないかと。

ムンクは自画像を数多く描いていますが、興味深いことに、現代のセルフィーのような自撮りショットも多く残しています。わざとぼかすなど、自身で演出した自撮りショットも貴重なムンクの一面を知る見どころの一つです。

展覧会前日に開催された報道内覧会では予想以上の人が集まっており(内覧会でここまで入っているのは経験上初めて)、注目度の高さをあらためて感じました。この日、テンペラ・油彩画の《叫び》(1910年?)の前では、ムンク美術館の展覧会およびコレクション部長であるヨン=オーヴェ・スタイハウグ氏がムンク作品の特徴を解説。


エドヴァルド・ムンク《赤い蔦》1898-1900年

ムンクの多くの作品に見られる特徴としては、「見ている側を挑発するようにこちらを見ている人がいて、遠近法を使って空間を用いることで、自分が伝えたいものの中に我々を引き込もうとしている」とのこと。そうすることにより、彼は作品の中で自分の感情をドラマチックに表現しようとしているのだそうです。(《叫び》の近くに展示してある)《赤い蔦》も《叫び》と同じく、強く激しい感情を伝えようとしている作品。

展覧会の音声ガイドでは、声優・福山潤さんの語りで、ムンク自身が残した手紙や著作物がもとになった言葉がとても良かったです。あまりにも繊細で純粋で人間臭いムンクの存在を、身近に感じることができました。

展覧会公式キャラクター「さけびクン」の声も福山さんが担当されているのですが、1.5頭身ほどの可愛い「さけびクン」の声がなんとも王子様風イケメンボイス(笑)プリンス感のあるナビゲートでオスロを紹介しています。膨大な作品を見て回っている中で、ふと癒されました。音声ガイドおすすめです。

 

展示室から出た瞬間に目の当たりにした膨大なグッズコーナーにも度肝を抜かれました。なんとも言えない憂いのあるムンク作品は、日本人の心に訴えるため、グッズにしやすいのかもしれません。「カラムーチョ」とのコラボや「ポケモン」とのコラボも人気!インテリア小物から文具、ファッションにお菓子、雑貨など、かなりの割合で家中ムンク一色にできること間違いなしの品揃え。(※グッズは数量限定のため、売り切れの場合あり)展示とともに、お買い物、フォトスポットで叫びポーズなどなど、館内さまざまなところでムンク展を楽しめるコンテンツがいっぱいです。

ちなみに本展は、6年以上もの長い年月をかけて開催に至ったそうです。日本でこれだけの作品群を見られる大変貴重な機会。「叫び」だけじゃない、知られざるムンクの魅力を探しにムンク展へ。来年1月20日まで開催中です。


エドヴァルド・ムンク《森の吸血鬼》1916-18年、《吸血鬼》1916-18年
エドヴァルド・ムンク《生命のダンス》1925年、《灰》1925年

エドヴァルド・ムンク《星月夜》1922-24年、《夜の彷徨者》1923-24年

エドヴァルド・ムンク《自画像、時計とベッドの間》1940-43年

ムンク展―共鳴する魂の叫び
会期:2018年10月27日(土)~2019年1月20日(日)
休室日:月曜日(ただし、11月26日、12月10日、24日、1月14日は開室)、12月25日(火)、1月15日(火)[年末年始休館]12月31日(月)、1月1日(火・祝)
開室時間:午前9時30分~午後5時30分 ※金曜日は午後8時まで(入室は閉室の30分前まで)
会場:東京都美術館 企画展示室
東京都台東区上野公園8-36 http://www.tobikan.jp
問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
公式サイト:https://munch2018.jp
公式SNS:
Twitter https://twitter/munch2018
Facebook https://www.facebook.com/munch2018

※作品はすべてオスロ市立ムンク美術館所蔵 All Photographs © Munchmuseet

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(2018年11月12日更新)
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